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交渉を学んでいる大学生のWSがとてもタメになった ~学びと案内~

 こんにちは。

休みに神奈川に来たのに目当ての店が臨時休業でした。僕もSUICAも泣いています。
 
さて、今回は交渉に関して書きます。
 
一昨日の日曜日に、交渉に通じており、大学との交渉や官庁の交渉にも関わっている学生のWS(ワークショップ)に参加しました。参加者は10名程度で、学生は全員が僕より偏差値の高そうな人たち、学生以外は組織内にとどまらず個人でも活躍しているような人でした。
 
プログラムは非常に整理されていて、人からもコンテンツからも色々なことを学ぶことができたと思います。もう一度受けたいぐらいのものだったので、その時の学びがを整理したいと思います。
 
ワークショップの構成は
・自己紹介
・交渉とは
・交渉の準備
・模擬交渉
というもので、無駄の無い洗練されたプログラムでした。
 
自己紹介は置いておいて、まずは交渉とは何かということを、「よくある誤解」を例に挙げながら解説してくれました。
 

交渉とは何か

交渉は、
・相手の意見を変えること
・論破するためのもの
・コミュニケーションの技術
ではありません
 
上記は交渉技術の一部といえるかもしれませんが、交渉そのものを指す言葉とは言えません。
 
交渉は、相手を倒すものではなく自他の利害を把握して、お互いの利益を最大化するための活動のことです。交渉相手と対面している瞬間だけではなく、準備も含めて交渉の一部だと言えます。
 

交渉の準備

講師の方は、その「準備」が非常に大事だと言い、「交渉の準備とはどういうものなのか」を体系的に分かるよう、整理をしてじっくり話をしてくれました。
(この「体系的に」という部分がこのWSの優れた点だと思います。「準備が大事」とだけ言われても全体像が整理されていなければ、「どこまでで準備完了なのか」ということがわからないからです。)
 
まず、準備をするメリットの紹介がありました。
それは、「心の余裕ができること」「コミュニケーションの技術を活用しやすくなること」「損が少なくなること」の3点です。それぞれ詳しく説明することは割愛しますが、以降で説明する交渉の準備プロセスを事前に済ませておけば上記のメリットが得られるだろうことは想像に難くないかと思います。
 
さて、肝心の準備プロセスは、以下の4ステップとなります。
1. 自分の利害を分析し、理解する
2. 相手の利害を分析し、理解する
3. 交渉戦略を立てる
4.「社会の目」から検討する
 

1.自分の利害を分析し、理解する

自分の「最も実現したいこと」「絶対に実現したくないこと」を明らかにすることで、交渉の妥結範囲を確定します。
 
「最も実現したいこと」は、

・得られる利益が大きいか
・現実的であるか
・相手に説明可能であるか

という観点から整理をします。参加者の状況やスキルによって現実性や説明可能性は変動しうるものかもしれません。しかし、大部分は十分な準備をしていれば特定はできるでしょう。
 
「絶対に実現したくないこと」は、
上記の字面だけでは誤解を招くかもしれませんが、下回ってしまうと、交渉が決裂した方が利益が高くなってしまうライン」を基準に決めます。

 

つまり、「交渉から降りて他の手段を選ぶこと」も交渉の選択肢に入れることを前提として考えていきます。
 
このラインを決める際に必要なのがBATNA(Best Altenative To a Negotiated Agreement)です。
 
BATNAとは、「相手の提案に合意する以外の選択肢で最も良いもの」を指します
(詳しくは割愛するので、こちらを参照)
 
ものすごくカジュアルに言うと、「その話に乗らなくても、私には◯◯の選択肢があるんだからね!>_<」と言えるものです。
「そんな安く売るぐらいなら、Bookoffで100円で買ってもらうわー」というセリフの「Bookoffで100円で買ってもらう」という部分がBATNAです。
 
これが決まれば、交渉で譲れない限界が決まります。自分のBATNAを設定せずに交渉に望んでしまえば、相手の提案の良し悪しが判断できない上、限界を把握していない故に予想外の不利益を被る可能性があります
 
また、もし、BATNAが相手に知られてしまうと、そのラインまで合意点を下げざるを得なくなるので、情報の管理は慎重にならなければなりません。逆に、相手のBATNAを知ることができれば、相手の妥協点まで強気に交渉を進めることができます。
 

2.相手の利害を分析し、理解する

前述の通り、相手のBATNAを知ることができれば、かなり有利な交渉となります。BATNAを知らなくとも、相手の利害を知ることは、お互いの利益を最大化することに繋がるため、非常に重要なステップとなります。

 

一方で、相手の情報は簡単に集められるものではありません。自分の情報とは違い、「予測せざるを得ないもの」や、「わからないもの」が存在するため、困難を伴うステップでもあります。
 
2ステップ目は、「相手の情報を集めること」から始まり、「わからない情報を予想」し、「予想できないものは聞く準備をする」という流れになります。
 
その際に、収集し、整理すべき項目は前のステップと同様で
・「最も実現したいこと」
・BATNA
・「絶対に実現してはいけないこと」
となります。
 
上記を意識しつつ、相手の立場に立ち、様々な情報を集めながら、交渉までにお互いの条件を整理していくことになります。相手の立場を考えるときには、相手組織の利害だけでなく、相手個人の利害も考慮にいれることを忘れてはならないでしょう。

 

本来的な組織の目的があったとしても、影響力のある個人の嗜好や状況によって交渉の結果が左右されることは珍しくありません。
 

3.交渉戦略を立てる

お互いの条件を十分整理したら、それをどう調整していくかを考える必要があります。お互いの利害は様々なので論点ごとに整理したり、合意までのタイムテーブルも引いておくことで交渉の実現性を確認します。
 
このステップは、1,2のステップを元に進めることになるので、十分に事前準備しておくことが肝要です。
ここまで来て始めて、どの点は相手に譲るだとか、どの論点から話をするかだとか、ふっかけるとか、「倍返し」だと怒鳴るだとか、そういうコミュニケーション手段を選ぶことになります。
 
論点の特性だけでなく、自分のスタイル、自分と相手との関係性なども考慮して戦略を用意することが重要です。
 
4.「社会の目」から検討する
最後に、前ステップで立てた交渉戦略を「社会の目」から検討することを忘れてはいけません。
1回限りの交渉というのはありませんし、やり過ぎた交渉は長期的な損に繋がる可能性があります。また、第三者がいる場合には、不当な交渉をすると思わぬ問題を起こす可能性もあります。
 
「社会の目」というのが難しく思えるのであれば、例えば、「就職面接でその交渉のプロセスを面接官に伝えることができるか」とか、「情熱大陸でその交渉のインタビューに答えられるか」いうような観点で見返して見ても良いかもしれません。
 
以上、4ステップの交渉の準備を済ませてから交渉に臨めば、交渉の場で急遽対応しなければならないことも少なくすることができ、余裕を持って交渉を進めることができそうです。


その気だけでは終わらない

しかし、できそうな気になっているだけで終わらせてくれないのが、このWSのもう一つの非常に優れている点でした。上記説明の後、模擬交渉を1人3回行うという実技演習も用意されていました。
 
模擬交渉を通じて、
必要な情報を得ることの難しさ、不確実な情報への対処、自分の癖などが、予想以上に露わになり、苦労する一方で、
必要な情報を集められたときの状況の変化など、事前準備の必要性も強く実感できる良い体験となりました。
 
「一見ハードで攻撃的なやり取り」が必ずしもお互いにとって良い結果に落ち着くわけではなく、逆に対話が多くて和やかに終わった交渉が最終的にお互い同程度の利益を生む結果になるなど、フィードバックまである練習をしてみないと分からないことも学ぶことができました。
 
実際の交渉では、論点のズレや状況による制約と変化なども生じるため、情報の整理の仕方や出せるカードがもっと複雑になるのだと思います。しかし、基本的な準備の枠組みやアプローチは今回のWSで学んだ枠に収まっていると思いますし、今回の経験をもとに普段の交渉を改善するための具体的な方法をいくつか発見できました。

 

今回の体験を思い返しながら「武器としての交渉思考」や「ハーバード式交渉術」を読み直したいと思いますが、また彼のWSの続編があれば受けたいと思っています。
 

また交渉WSを開催したい

というか、実は「機会があれば改良版をやってみたい」ということも本人に言ってもらっているので、交渉に興味があり2,000~3,000円ぐらいだったら出してもいいという方が10人以上集まりそうであれば、年内開催@東京ぐらいで企画したいと考えています。
 
もし、興味がある人がいましたら、応募フォームから連絡ください。開催することになった場合、優先的に連絡させていただきます。
 

最後は案内で終わってしまいましたが、今回はこの辺で。

 

武器としての交渉思考 (星海社新書)

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ハーバード流交渉術 (知的生きかた文庫)

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